短歌と俳句の違い




いろいろな歌の形が、日本にはあります。

代表的な歌としては、俳句や短歌、川柳があります。

子供のときに国語でいずれも学習したはずでしょうが、大人になって短歌と俳句はどのような違いがあるのだろうかと思うこともあるでしょう。

ここでは、短歌と俳句の違いについてご紹介します。

目次

短歌とは?

ここでは、短歌の歴史と特徴についてご紹介します。

短歌の歴史

短歌は、3回以上五・七を繰り返す長歌に対して、終わりに添える歌としてすでに奈良時代頃に詠まれていました。

長歌が時代とともに詠まれなくなって、短歌が勢いを得てきました。

短歌は長い歴史があるため、時代によって短歌の言葉が指すものが違っています。

平安時代からの短歌は漢詩に対する和歌をいって、明治時代からの短歌は西洋詩に対する日本的な詩をいいます。

そのため、趣や約束事が平安時代からの短歌と明治時代からの短歌は違っています。

短歌の特徴

ここでは、明治時代からの短歌、つまり近代短歌の特徴についてご紹介します。

短歌の特徴は、自由な作風で、五・七・五・七・七で詠まれることです。

大きく分類すると、表現方法としてはアララギ派の短歌と前衛的な短歌の2種類があります。

アララギ派の短歌

アララギ派の短歌は、正岡子規が唱えた古代短歌の作風の万葉調やありのままに物事を詠む写生を重要視したものです。

「アララギ」という短歌雑誌に集まった歌人が、メインに詠んでいます。

内容としては、素朴な暮らしに密着した作風が多くあります。

表現方法としては、平安時代から続く特定の言葉に係る枕詞などの技法が使われているものもあります。

前衛的な短歌

前衛的な短歌は、古代の短歌の題材や表現技法を使わなくて、叙事詩・叙景詩・抒情詩として詠んでいるものです。

重要視しているのは主観的な表現であるため、表現内容が作者によって多岐に渡っています。

話し言葉で現代の短歌は詠まれており、個人的な主張や出来事などの内容が多くなっています。

そのため、広く一般にも受け入れられており、いくつかのベストセラー短歌集が出ています。

俳句とは?

ここでは、俳句の歴史と特徴についてご紹介します。

俳句の歴史

室町時代頃から、俳句の原形の連歌が始まりました。

この時期は、短歌の上の句と下の句を交互に別の人が、五・七・五、七・七、五・七・五、七・七というように百句詠み続けるスタイルで、複雑なルールもあったため、上流階級のものになっていました。

連歌の初めの五・七・五の発句のみが江戸時代頃に詠まれるようになって、簡略にルールがなったことによって、庶民も俳句が詠めるようになりました。

松尾芭蕉は、俳句を確立して浸透させています。

明治時代から、細くルールがわかれて、スタイルを守って写生する(ありのままに物事を詠む)ホトトギス派、五・七・五調や季題にこだわらない新傾向俳句、叙情をホトトギス派に加えた馬酔木、形式から抜けた自由律俳句など、いろいろな俳句が生まれました。

現在では、世界最短の17音で詠まれる定型詩として、年齢や国に関係なく親しまれています。

俳句の特徴

俳句の特徴は、季節を示す季語といわれる言葉が入っており、五・七・五調で詠まれることです。

表現技法が17音を活かすために確立されており、切れ字という文章の切れを示すものや体言止めという名詞で文章を終えるもの、省略という余分な言葉を省くものなどがあります。

そのため、詠まれた背景を俳句はイメージする必要があり、どのような状況で詠まれたかが場合によっては追記されているときもあります。

しかし、自由律俳句というあえて形式を破ろうとするものも一つの俳句であり、スタイルにこだわらない作風もあります。

短歌と俳句の違いとは?

短歌も俳句も、代表的な日本文化の定型詩です。

定型詩というのは、厳密に文字数が決まっている詩です。

短歌も俳句も目的が同じようなものであり、いずれも、悲しみや喜びなど、自分が見た風景や感じたこと、自然などを言葉にして伝えます。

そのため、短歌と俳句は間違えやすく、素人であればよく違いがわからないでしょう。

文字数と季語があるかどうかが、大きな短歌と俳句の違いです。

俳句は、五・七・五の17文字です。

有名な俳句としては、例えば、平泉で松尾芭蕉が詠んだ「夏草や 兵どもが 夢の跡」があります。

この俳句の季語は「夏草」になります。

この俳句の意味は、「このあたりはぼうぼうに夏草が生い茂っているが、藤原氏が昔は栄え、無念にも源義経が討たれたところなんだよなぁ。時の流れというのは、寂しくて残酷だなぁ。」というものです。

「夏草」という季語があることによって、時の移ろいと自然の繋がりができ、夏草が生い茂るところに実際に立っているような、俳句の世界に引き込まれるような感じがします。

一方、短歌は五・七・五・七・七の31文字です。

そのため、俳句より文字数が長いため、作るのがちょっと大変でしょう。

有名な短歌としては、例えば、教師であった島木赤彦が詠んだ「隣室に 書よむ子らの 声きけば 心に沁みて 生きたかりけり」があります。

この短歌は、「病気で寝ていれば、勉強をしている子供の声が隣の部屋から聞こえてくるではないか。さらに生きたいという気持ちが、心に染みて湧いてくるなぁ。」という子供たちの愛情と生きる希望を表現したものです。

季語を入れるというルールが短歌にはありません。

また、短歌としては、このように家族への愛情や恋、自分の身の周りのことなどを歌ったものが多くあります。

四季や自然を歌った短歌は俳句と同じように多くあり、このことが俳句とよく間違われるところです。

例えば、平安時代の大貴族の学問の神様である菅原道真が詠んだ短歌として、「東風吹かば にほひおこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな」というものがあります。

この短歌は、菅原道真が藤原氏との権力争いに破れて九州に左遷されたときに、梅の木が家にあるのを見て詠んだものです。

意味としては、「春風が吹けば、梅の花よ。風にその香りを乗せて、今から私が行くところまで運んでおくれ。春を忘れないで、私がいなくても咲いておくれ。」ということです。

春に当たる「東風」「梅の花」という言葉が入っていますが、春にこの歌は詠まれたものでなく、菅原道真の心象風景にこれらの言葉は当たるものです。

また、平安時代に三十六歌仙の一人の紀友則が詠んだ短歌としては、「久方の ひかりのどけき 春の日に じづ心なく 花のちるらむ」があります。

意味としては、「日の光のどかな春の日に、桜の花はどうして落ち着きなく散ってゆくのだろう。」ということです。

この短歌は、春の風景を完全に歌にしており、五・七・五・七・七である以外は、全く俳句と同じでしょう。

つまり、短歌と俳句の違いは、次のようになります。

俳句では季語がほとんど必要ですが、このルールは短歌にはありません。

文字数は、短歌は五・七・五・七・七の31音ですが、俳句は五・七・五の17音です。




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